コラム
タイの不動産マーケット概要と近年の状況
今回は、物件購入を検討する前に重要な基本情報となるタイの不動産マーケットについてご紹介いたします。タイの不動産マーケットの概要と近年の不安定な世界的情勢が続く中、マーケットがどのように変化しているのかについて簡単にご案内いたします。
タイの不動産市場概要
タイは東南アジアの中でも広大な土地を持ち、最も訪問者数が多い国の1つです。近年著しい経済の発展をみせ、多様なリゾート・ビーチ、豊かな文化・美食といった観光地としての魅力のみでなく、バンコク首都圏と周辺の県を中心に経済の発展・インフラが発達したことにより利便性・快適性の高い暮らしが実現できることから、タイでの事業展開、また居住する外国人も年々増加傾向にあります。このような背景から、投資や居住を目的とした不動産の購入が盛んに行われ、過去数十年にわたりタイの不動産産業は急速に成長してきました。
タイの不動産市場の成長と今後の動向
タイの国際的な不動産コンサルティング企業であるCBREのレポート(2023)の統計をみると、タイ経済の平均成長率が過去10年(2010年 – 2020年)にかけて、平均約5%前後と堅調な成長をみせています。しかし、2020年から2022年にかけて、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の影響により不動産市場は低迷しましたが、近隣国と比較すると市場規模は高い水準を保っています。タイの不動産市場は、主に住宅、商業、産業等のセクターで構成され、その中でも住宅セクターでは、マンションやコンドミニアムの購入が多く、外国人向けの物件も多数存在しています。
高い需要を保つための施策として、タイ政府によるバンコク首都圏の大量公共輸送網整備事業の計画や東部経済回廊(EEC)の開発等、海外からの投資を呼び込むインフラ政策の推進が不動産産業拡大の鍵となっています。タイは経済成長のため、長年にわたり海外からの投資を重要なファクターとしてきたため、外国人投資家に対して特別な税制優遇措措置を設けており、商業・産業セクターの不動産投資の機会拡大を図っています。
過去数年はCOVID-19の影響により、コンドミニアムの新規着工件数は一時的に低迷しましたが、状況の緩和に伴い、2022年第4四半期の新規着工件数は、12,693ユニットで前期比42.7%増、前年比38.2%増と堅調に増加しています。(図1参照) そのうち都心部は、18.4%を占め、81.6%は郊外の案件になります。また、当四半期に完成したマンションは合計9.926ユニットで、47%が都心部に、残りの53%は郊外に位置しています。価格帯が100万から300万バーツのコンドミニアムが引き続き全体の主流となっていますが、新規で販売が開始された都心部の物件は、高級・ハイエンド物件であり、今後このような傾向は続くことが予想されます。
図1:Bangkok Overall Figures Q4 2022
また、バンコク都心部のコンドミニアムは近年横ばいとなっておりますが、戸建て住宅とタウンハウスの価格が2022年第4四半期に上昇をみせました。(図2参照)国内の需要に伴い、低層住宅の開発が同時期に進んでいる中、物価上昇の影響を受けたことが一つの要因と考えられます。
図2:Bangkok Post: Price index hits high in final quarter (https://www.bangkokpost.com/property/2488932/price-index-hits-high-in-final-quarter)
2022年、COVID-19の緩和を鑑みて、タイ政府はいち早く経済の回復をするため、外国人旅行客の呼び込みに積極的になっています。そのため、2023年からは国内の低層住宅に対する需要の上昇は重視しつつ、海外投資家からの不動産投資の機会を増やすことにより、市場回復を図る見込みです。
COVID-19によるパンデミックは、人々の働き方や暮らしに大きな変化を与え、不動産市場にも影響を与えました。人々は、働き方の多様性を考え、ニーズに合った環境・暮らしを求める傾向が強くなり、近年のワークスタイルに合わせた住宅の開発が進むことが考えられます。2023年以降のタイにおける不動産開発に関わるトレンド予想については、また別の記事で詳しくご紹介します。